こんな感じで作っています(ザックリ版)
MATCH Leather Worksでございます。
最近はアトリエの修繕にかかりっきりですが、ちゃんと製作も頑張っています。比率は若干おかしな事になりつつありますが…
アトリエ予定地の後ろ、外観にはまったく関係ない所が崩落。ちょっと素人にはどうしようもない感じで、そこも修繕をお願いする事になりそうです。あぁ、またもや出費…でも安全が一番ですからね!頑張る!
さて、今回は珍しくどんな感じで作っているかを少しだけ。
長濱レザーは所謂【ヌメ革】というヤツです。時間が経つと飴色に変化して味が出るんですよねぇ、とよく言われるアレですね。そのヌメ革がまったくお化粧していない状態のモノを仕入れて、柿渋とべんがらで頑張って塗装をかけています。
よく塗装に関しては書いているので、今回は製作について。ウチのド定番「TEIKI」を実験台にしてみましょう。
まずはパーツを切り出します。機械とか抜き型なんてものはないので、革包丁などの刃物と革ポンチでザクザク切り出すのです。
で、切り出したパーツさんがコチラ。
ちょっと写真が見辛いですがこんな状態。断面がケバケバしてませんか?これが切りっぱなしの状態です。そのままの状態で売ってるトコもありますが、頑張ってコレを磨きます。触り心地も耐久力も違うし、何より見た目が美しくなりますので。
ヌメ革の特徴として「濡らして圧をかけて磨けばツヤピカになる」という特徴があります。可逆性がどうとか難しい言葉は無視です。
濡らす→擦る→ツヤピカ!
とりあえずこれでOKです。
ウチでやってるコバ処理はこんな流れ。
ヤスリで磨いてから軽く濡らして磨く
↓
熱処理
↓
番手の細かいヤスリで再度磨く
↓
トコノール塗布して磨く
↓
ロウびきして熱処理
↓
オイル入れ
納得いかない場合は磨き処理を繰り返しますが、大体こんな感じです。ちなみに【コバ】というのは革の切り口、断面の事を指します。
磨くとこんな状態。ツヤピカです。地味にサイドポケットに捻入れとかもしてます。
組み上げ前に磨けるのは写真の部分だけなので、ここから組み上げ。まずはサイドポケットと前胴をくっつけます。
ハイ、くっつけました。超カンタンですね。最初に大きさをしっかり調整してから貼り合わせればOKです。ちなみに片方を少し大きく裁断してから貼り合わせて余分を切り落とす「チリ落とし」というやり方もあります。が、自分はやりません。なんとなく性に合わない。それだけの理由です。カンタンですね。
貼り合わせに関してですが、ウチでは白ボンドを使います。サイビノールなんかが革用としてはよく使われていますね。ゴムのりは苦手なので使っていません。なんだか使いにくいんですよ。
道具やらの採用・不採用理由の8割は自分の手に馴染むかどうかなので「革細工のエラい人がこう言ってる」とか知った事ではありません。その人達だって自分にとって使いやすいものを勧めてるハズ。だから「あの人がこう言ってるから私も!」なんて道具の選び方しなくていいと思います。自分に馴染む、が最強ですよ。
さて、貼り合わせたら一部を先に縫っちゃいます。今縫わないと縫えないからです。単純ですね。糸はビニモMBTの5番手。ピッチがもう少し広い場合は1番手を使っています。自分にとってはこのバランスが一番美しいので、これ以外では縫いたくないレベルです。
で、縫った所を前述した感じで磨いたらいよいよ大詰め。背面パーツと組み合わせます。
簡単に組み上げるなら、背面パーツを貼り付けて片面から菱目打ちでガシガシ叩いてやればOK。でもちょっと手間をかけます。貼り合わせる両パーツの同じ位置に先に穴を開けてから貼り合わせ。ウチでは裏表両方見える箇所は基本この方法です。
手間が二倍かかるので、正直面倒臭いです。でもここは自分のこだわりたいポイントなので妥協は出来ません。
写真で見てもらうとこういう状態。貼り合わせたらそのまま針が通るように穴が開いています。これがズレてたりすると縫えません。開け位置を間違えたら終了です。修復出来ませんからね。
じゃあなんでこんな面倒臭い事するの?という話になると思います。
この写真は、貼り合わせてから菱目打ちで穴を開けた革の裏です。こんな感じで穴が開きます。穴を見てもらうと、上の写真に比べて菱の形が逆になっているのがわかります。縫っていくと表に対して糸の走り方が変わるという事です。
具体的に見てみましょう。左は穴を開けてから貼り合わせ、右は貼り合わせてから穴開けをしたものです。糸の走り方が違うのがよくわかります。要は縫い目に表裏が出来てしまう、という事です。これが嫌いなんですよ!裏表なんて存在して欲しくないというか…美しくないと思ってしまうのです。
なので、穴を開けてから貼り合わせます。少しでも美しく作りたいのです。
貼り合わせてから縫って、カドを落として磨いて完成。
こうしてひとつひとつ機械を使う事なく、すべてを手作業で製作しています。
時代に合わない非効率的な作業であるとわかっています。しかし、そういった手間物を愛してもらいたい。消費するアイテムではなく、長年付き合っていく相棒になってもらいたい。そう思って製作する毎日です。
長濱レザーの特徴は、美しい木目模様の塗装です。
べんがらと柿渋による塗装で防汚・防カビ性も期待出来ます。
それは地域の色を残したいと思う職人がひとつひとつ手作業で塗装を施し、下処理や縫製を行っています。
皆様に愛していただけるように、明日も丁寧な仕事を。
お付き合い、ありがとうございました。