MATCH Leather Works の All That's BANZAI !

長濱レザーのMATCH Leather Works

革こぎん、始めるかもしれません

 MATCH Leather Worksでございます。

 早速ブログを更新しているのは、折角手に入れたX230ちゃんで文章を打ちたくなっているから。ThinkPadのキーボードは評判がいいのは知っていたのですが、ホントに打ちやすい。FnとCtrlの位置が逆なのが個人的にはネックですが、こんなの慣れれば問題なし!そのうち戯曲的なモノも書いたりしたいので、この打鍵感は非常に素晴らしい。

 と、新しく手に入れたツールのお話は置いといて、今回は少し新しく思いついた取り組みについて。

 いきなりですが、【こぎん刺し】というものをご存知でしょうか。

 青森県津軽地方で伝統的に伝わっている「刺し子」というもので、麻布に刺繍を入れていくってヤツです。

 気になる方、一応wikiだけ貼っておくので良かったらチェックしてみてください。木綿が取れなくて麻布で野良着を作ってたんだけど、麻は目が粗いので風を通しちゃう。だから刺繍入れて布地の目を埋めて暖かくなるようにした、との事。

 刺し子には件の【こぎん刺し】の他に青森南部の【菱刺し】と庄内の【庄内刺し子】の三つを合わせて日本三大刺し子というそうです。では、何故よくわからんモノを好んで作る革屋のおっさんがそんな伝統的でステキなものに着目したのか。

 ある意味理由は簡単。

 ウチの母親が津軽の出身だから。

 長浜市合併前の伊香郡というド田舎に生まれた父と青森は北津軽群というド田舎で生まれた母。その間に生まれた自分は、現在住んでいる長浜市の風習を転用した長濱レザーを製作しています。

 「長浜がもっと元気になればいいな」という思いの片隅で、母親が住んでいた土地をほとんど知らない事に気づきました。何せ大学生の頃、夏休みに一週間ほど遊びに行ったきりです。青森の祖母は方言が激烈にキツく、何を言っているかまったくわかりませんでした。宇宙人と会話をしているような不思議な一週間でしたが、母から言えば、それでも相当わかりやすくしゃべっていたそうです。

 正直それくらいの思い出しかない母の生まれ故郷。なんだか寂しくなってしまいました。母も最初は長浜に対してそれくらいしか知らなかったはず。きっとこちらに嫁いできた時、とても心細かったと思うのです。まったく知らない土地、方言も違うし友達もいないし喧嘩したって逃げ帰る場所もない。それでも歯を食いしばって自分を育ててくれた訳です。

 そうやって頑張ってきた母が生まれた土地の風習をもっと知らなきゃいけない。そんな気がしたのです。

 そこで行き当たったのが【こぎん刺し】でした。

 自分が取り組んでいる長濱レザーと、津軽に残る伝統的なこぎん刺し。この二つを組み合わせて革こぎんが出来ないか、と今考えているのです。

 針と糸には慣れてるしまぁなんとかなるでしょ、とナメてかかってました。

 いや、正直これはヤバい。手間がハンパない。

 何がヤバいかというと、刺し子って縦糸に対して横に奇数目で幾何学的な模様を刺繍していくのですが、革には当然縦糸も横糸もありません。

 自分で全部穴を開けないといけない、という事です。

 もちろん菱目で開けるなんて出来ません。目打ちで一つずつ手で穴を開けます。伝統的に伝わっている「モドコ」という図案があるんですが、これが細かい!そしてこれを布にあしらっていくんですが、ワンポイントじゃないんです。全体的にバリバリ入れていくんです。

 ヤバい、マジでヤバい。

◆◇何がヤバいか◇◆

①凄い数の穴を目打ちでひとつずつ開けていく

幾何学模様だから規則正しく開けられないと全然美しくない

③大きく作ると糸がたるむから限界まで細かく作らなければならない

 はい、ヤバいです。図案の転写だけで心と右手が折れそうになりました。ナメてました、すいません。

 でも、やってみたいのです。

 だからやってみました。

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 まず試作。緑ステッチは3mm間隔の図案。紫ステッチが2mm間隔。3mmでは一番長く糸が渡る部分が何かに引っかかって糸が切れてしまいそう。実際に製作していくなら2mm間隔が限界でしょう。正直これ以上は細かく出来ません。革が切れてしまう。

 じゃあやってみたい図案を転写しましょう。図案は写真とか見てなんとか読み取って自分で2mm方眼書いて穴開けました。

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 出 来 る 気 が し ね ぇ !

 猫の足という可愛らしい図案なのですが、この時点で心が折れそうです。本気でやるなら革全体にこれが並んでいる、という事になります。もちろん他の図案との組み合わせになるのですが、そういう問題じゃない。

 いや、やると決めたからにはやる!

 オイラはそういう男だ!

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 頑 張 っ た !

 正直メチャクチャ大変だったけれど、完成した時の美しさに少し言葉を失いました。

 滅茶苦茶カッコイイじゃないのよ、アナタ!

 革を厚くしないと、糸の張力で革が歪んでしまう。なのでインテリア的なプレートものを作るか、現在作っているペンスタンドやマウスパッドにこれをあしらうか。今の所これくらいしか実用が思いつかない。

 でも美しい。

 

 父の故郷と母の故郷。掛け合わせて新しいものを生み出す。そんな取り組みが始まるかもしれない。

 乞うご期待。

 

 お付き合い、ありがとうございました。