べんがらを塗ろうよ
MATCH Leather Worksでございます。
4月も折り返しを過ぎ、本格的に暖かくなってきました。こうなってくると、塗り作業が楽しくなってくるのです。
天日も強過ぎないから乾燥も適度ですし、気温が低過ぎないから柿渋の状態も安定して扱いやすい。テンション★マックスですね、ハイ。
さて、どうにも自分の仕事を知っていただく機会が少ないように思います。どうすればいいのだろうと毎日斜め45°になりながら虚ろな目で考えていますが良い案が思いつきません。露出を増やすといいと御伺いしますが、裸になるくらいしかその方向性の答えが見出せない上に確実に間違っている事がわかっているから、結局また斜め45°になって途方に暮れる自分がいます。
結局地道に活動を続けるしかないのだなぁ、と思うに至りましたので、べんがらの塗りに関して少々。
さて、この赤いヤツがべんがらです。
よく勘違いされますが、べんがら=赤い液体ではありません。べんがらは粉末顔料なので文字通り粉です。目の前でくしゃみでもしようものならオカンにこの世の終わりレベルの怒りをぶつけられますのでお気を付けください。何故そんなに怒られるかって?粒子が細かくて、服に付着しようものならそう簡単には落ちないからです。
液体状になっているのは柿渋で溶いているからです。水で溶いて塗る方法もありますし、横着するならニスに溶いてしまってもいいかもしれません。要は粉末顔料なので、液体に溶いてしまえば色は付きます。その後にどういう処理をするかが大切です。
あくまでもべんがらは粉末顔料であって、定着材の類は含まれていません。
では乾燥したらどうなるのでしょうか。
答えはもうビックリするくらい簡単。
超 絶 色 落 ち す る !
はい、メチャクチャ色落ちします。手で擦ったら真っ赤になります。だって粉末がそのまま固着しないで乗っかってるだけだもの!擦ったら手が真っ赤は自明の理であります。
ここで「べんがらを何で溶きましたか?」が重要になってきます。
水なのか柿渋なのかケミカル材料なのか。
後処理が重要なのは色落ちしてしまうからですが、何で溶いたかで処理も変わります。
水溶きなら固着する要素がないので、乾性油で拭き上げたりニスやウレタンでトップコートをかけたりする必要があります。
ケミカル材料、例えば前述したニスなら特に何もする必要はありません。ニスがべんがらを定着させているので色落ちの心配はないでしょう。
ちなみに自分は柿渋で溶いています。柿渋は乾燥すれば強い塗膜を作りますし、色の定着も行います。防腐防カビ効果もあるので自然材料に塗るには最適なのではないでしょうか。その後で乾性油やワックスやらで濡れ感を出しながらべんがらを定着させればよりベターです。
そんな訳でべんがら&柿渋をこの板切れに塗ってみました。アジトの床をラーチ合板(針葉樹林合板)にする予定なので、その為のテストでもあります。そう、アジトの床は全面真っ赤になります。なかなかのインパクトかと思いますので、是非ワクワクして続報をお待ちください。
べんがらを塗った事がない方に、ひとつだけコツをお伝えいたします。
それは余分な塗装液を拭き取るという事です。
「なんだ、そんな事かよ。もっと役に立つ事言えよコンチクショー」
とか、そんな悲しい事を言ってはいけません。とっても大事です。余分なべんがら粉末を取り除いて木目を綺麗に見せる為でもありますし、粉末の残りが多いと、色移りの恐怖に怯えながら明日の朝ごはんの献立を考える羽目となります。
で、余分な塗装液を拭き取ったら乾燥させます。おおよそ一晩ほどでしょうか。乾燥が確認出来たらオイルで拭き上げたりすればOKです。メンテナンスをしっかりすれば、ステキな赤が長続きしますよ。
しかし、革へ使う場合そうはいきません。溶液の吸収具合やら拭いた時の素地の風合いやら、木材に塗るのとはかなり様子が違います。
そこで当方では、薄塗りを繰り返すという方法で革にべんがらを塗布しています。
塗る→乾かす→磨くの工程を納得いく色目が出るまで、延々と繰り返します。正直だいぶ面倒臭い工程で、まったく量産向きではありません。逆にこの手間がかかる工程によって美しい木目模様や深い色合いが表現されるといえます。
今回ロットでの塗り回数は8回。ツヤ出しに柿渋のみ塗布を2回。天日乾燥。防染処理。オイル入れ。床面の洗い。揉みほぐし。作品を作る状態になるまでにおおよそ一週間ほどを要する長濱レザー。
もっと皆様に親しんでいただければと思います。
ちなみに今回ペンケースの試作を行いました。長濱レザーの木目調を活かす為、木の枝とか丸太とかブッシュドノエルをイメージした状態です。
思ったより収納が出来る事に驚いていますが、まだまだブラッシュアップが必要です。
「MATCH Leather Worksなら、あの丸太みたいなペンケースがいいよ」と言ってもらえるような目玉商品になるよう、もう少し頭をヒネリます。
それでは今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
お付き合い、ありがとうございました。